サイクリングから「スポーツツーリズム×地域活性」の創出を!静岡・茨城で始まった挑戦
ルーツ・スポーツ・ジャパン(以下、RSJ)では、「スポーツツーリズム×地域活性化」事業の一環として、静岡県静岡市の「トライアルパーク蒲原」と茨城県かすみがうら市の「かすみがうらアクティビティヴィレッジ」でサイクリング拠点を運営しています。今回は、両拠点で運営を経験してきた2名の社員に、その楽しさや可能性について伺いました。 【聞き手・執筆/落合真彩(フリーライター)】
いま、地方自治体の注目集まる“サイクルツーリズム”とは?
RSJが運営する2つのサイクリング拠点施設は、サイクリングに関連する各コンテンツを通して地域活性を目指した場になっていますが、そもそもなぜ、サイクリング拠点が地域活性化につながるのでしょうか?
ウォーキングやランニングと比べ、サイクリングでの活動範囲は10キロや20キロと広範囲に及ぶそう。それはつまり、地域のより広い範囲の魅力を知らせることができ、より広くお金が循環するということです。
特にサイクリストはサイクリングチームに所属したり、同じショップを使ったり、一緒にレースに出たりと、横のつながりが強いのが特徴。仲間に「行ってよかった」という口コミが広がっていくことで、さらに地域の宿泊施設や飲食店もにぎわいを見せる。このような地域活性を目指して、地方自治体は今、サイクルツーリズムに関する予算を確保し、注力しているのです。
「トライアルパーク蒲原」は、自転車に限らず、キッチンカーや飲食店、フリーマーケット、犬猫関連の出店、運動会、音楽イベントなどが開催されているアクティビティ拠点。「トライアル」の名の通り、様々な企業や個人が、自社コンテンツやイベント開催に“トライ”しており、多様性にあふれた施設になっています。
霞ヶ浦のサイクリングロード沿いにある「かすみがうらアクティビティヴィレッジ」は、サイクリストのための設備が整う交流センター。サイクリングにおける“道の駅”のような形で利用でき、湖上バイクや隣の芝生エリアを活用したスポーツ・アクティビティイベントも数多く実施されています。
RSJはこの両拠点で、サイクリングのイベントを企画・運営するとともに、各自治体と連携し、サイクリング拠点として根付かせることを通して地域に人を呼び込む「サイクルツーリズム×地域活性化」事業を行っています。
“何もない地域”から見えたツーリズム創出の可能性
「トライアルパーク蒲原」のサイクリング拠点は、2022年7月にオープンしました。現在、地域開発ディレクターとして活動する花香聡美さんは、その立ち上げに携わりました。
観光系学部出身の花香さんは、陸上競技経験があったことから「スポーツ×地域活性化」に関心を持ち、大学在学中に、ランニングイベントを企画・実施。RSJには、インターンシップをきっかけに新卒入社しました。
静岡市蒲原にサイクリング拠点を立ち上げるにあたり、「サイクリングの土壌がほとんどない状態だから、地域開発という観点が必要」。そう考えた花香さんたちは、まず街の情報をある程度ネットで調べた上で、現地視察を実行しました。とはいえ、不安を抱えながらの滑り出しだったといいます。
花香「最初に降り立ったときの第一印象は『やばい、何もない……』でした(笑)。でもそのあと、片っ端からお店を訪問したり、地域の人と話をしたり、探っていくうちに面白い魅力がいろいろと見えてきたんです。蒲原は、東海道の宿場町として昔ながらの風情ある街並みが残っていて、入り込めば入り込むほど「人の魅力」を感じるエリアです。宿場町の雰囲気や人にゾッコンになり、移住して古民家を経営している方もいたりします。」
RSJ側は花香さん含め3名で手分けして地域の方々と対話をし、『こういうことをやってみたい』という要望を伝え、賛同を得ていくという形で地道に活動。拠点オープンまでにはある程度のつながりと、協力してもらえる人、場所、お店と、それぞれに協力してもらいたいことを定めることができたそう。豊富な行動量と熱量が感じられます。
7月にオープンしてからは、地域の方々と連携して1つひとつのイベントをつくっています。一連の取り組みを通して花香さんは、「目玉となる観光資源がなくても、魅力ある場所にできるとわかった」と手ごたえを口にします。
花香「沖縄や京都など、よく知られた観光地としてのブランドがあると、拠点もつくりやすいかもしれません。蒲原は、観光地として名が知れているわけではないし、実際に大きな観光スポットや遊べる場所、名産品など、『これ』という観光資源があるわけでもない。でも、そんな一見何もないような場所からでも、私たちのかかわり方、見せ方によって、その地域の盛り上がりはまったく変わってくるというのは発見でした。何でもないように見えた1つひとつの要素が、観光の魅力になるんです。そのアピール材料を、RSJで1つつくれたかなという実感があります。イベントをしたときに地域のお店の方から『自転車が来てくれたおかげで、私も話し相手が増えてすごく楽しい』と言ってくれたこともあって、本当に嬉しかったですね。」
山本美空さんは、もともと海外居住経験があったことで、国を超えて人と人がつながれるスポーツや観光について関心を抱き、大学でスポーツツーリズムについて学んできました。そして「人と人をつなげる仕事をしたい」という想いを持ち、花香さん同様に新卒でRSJに入社。
カスタマーディレクターとして直接的にイベント参加者と接しながら経験を積み、「かすみがうらアクティビティヴィレッジ」での拠点運営を経験。現在は、地域クライアントと一緒にイベントをつくり上げる進行管理にかかわっています。
かすみがうらでは現在、月に1回程度のイベントを実施し、毎回内容や見せ方をブラッシュアップしている段階です。
山本「参加者や来場者にはどんな方が多かったか、どんな反応だったかを把握して、次のイベントに生かします。たとえば、『前回は小学校高学年の層が多かったから、今回は大人まで楽しめるストラックアウトを導入してみよう』という形です。トライ&エラーで思ったことをすぐに実行に移せる環境があるので、やりがいも感じられると思います。」
窓口業務だけでなく、イベント企画から携われる
これまでRSJでは、地域開発をはじめ、スマホを使ってサイクリングを楽しみつつ、地域も学べるような「謎解きサイクリング」「宝探しサイクリング」といったコンテンツを開発。
拠点運営のスタッフが平日に行うのは、上記のようなイベントの企画制作・準備業務。新しい企画になりそうなことに常にアンテナを張り、アイデアを練って設計します。求められるのは、現地の人と密にコミュニケーションを取り、細かな調整をしていく力など。
土日祝日は、実際に各拠点で行うイベントの窓口対応業務が中心です。窓口業務のポイントを、花香さんはこのように語ります。
花香「遊びに来てくれた人の対応はもちろん、かすみがうらなら芝生エリア、蒲原なら拠点前のエリアで、アクティビティツール(モルック、ランニングバイク、グランドゴルフなど)の貸し出しをしたり、ときには一緒に遊んであげたり、サポートしてあげたりすることも大切です。ただ窓口で立っているだけではなく、街中に出ていって、『こういうイベントをしているんです』ということを伝えて、地域の人とつながることで、『みんなのサイクリング拠点なんだ』という認知を広げていくのも重要な仕事です。」
現在RSJが募集する拠点運営スタッフは、土日の窓口業務を中心に、勤務形態・日数は相談しながら決めることができるそう。もちろん意欲のある方は、正社員として入社し、平日の企画制作などにどんどん携わっていくことも可能。柔軟な働き方を選択できるところが魅力です。
今後より盛り上がる「拠点の顔」として、地域の魅力を創っていく
蒲原、かすみがうらともに、地域内外での認知向上に向けた取り組みは今後も精力的に行っていく予定だと2人は強調します。
山本「かすみがうらは、まだ月1回しかイベントを開催できていないのですが、もっと頻度を増やして、かすみがうらの人たちにより認知されるような拠点運営ができればと思っています。」
蒲原は「太平洋岸自転車道」という銚子から和歌山までのサイクリングルートに設定されているため、ロングライドをする人の休憩地点として、あるいは富士山方面や由比エリアなどにも行ける拠点として利用者を増やす取り組みを計画しているようです。
花香「地元の人がレンタサイクルを借りて、ちょっと遊びに行ってみようかなというような利用も増やしたいですね。ファミリー層、カップル、子どもたちにももっと届けたいです。子ども向けに夏休みの自由研究のような感じで『まち探検』企画を提案しようかなという話もあります。車社会だからこそ、子どもたちは自転車に乗ることで行動範囲が広がって、地域のいろいろな魅力を新たに知ることができると思うので。」
今後この2エリア以外にも展開予定ということで、2エリアでの拠点運営に携わることは、先行事例として貴重な体験になるはずです。また、両拠点ともに「今あるコンテンツ以外にも拡充が必要」と語りました。
RSJは、「アイデアが出てから実行に移すまでの距離が近い」のが強みだと2人は口をそろえます。新卒3~5年目の2人もどんどん意見を出しており、もちろん中途入社社員も多くいますが、「年齢、年次関係なく、フラットな関係性」だといいます。積極的にアイデアを出せる人、素早く行動に移せる人であれば、楽しみながら仕事をしていくことができる環境だと言えます。
また、「地域おこし」「地域開発」というキーワードに関心のある人、人とつながったり話したりするのが好きな人、新しいコンテンツを生み出していきたいと思う人にとっても魅力的な職場であることは間違いありません。
「拠点の顔」として、魅力的な拠点、魅力的な地域をつくっていく。そんな仕事をしたい方は、ぜひ一度話を聞いてみてはいかがでしょうか?
●募集要項