はじめに
日本全国で様々なサイクル・レジャー・コンテンツをお届けする「ツール・ド・ニッポン」を主催・運営する一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパンは、スポーツバイク所有経験のある1483人を対象に「エントリーユーザー離脱実態調査」を行いました。
ツール・ド・ニッポンでは、サイクリングを目的とした観光誘客を促進することで地域経済を活性化する「サイクル・ツーリズム」を提唱するうえで、かねてより「玄人の愛好者」ではないエントリーユーザーにも、気軽に地域でサイクリングを楽しめる環境が重要と考え、それを適えるコンテンツ(イベントやツアー、スマホアプリなど)のあり方を模索してきました。
しかし、サイクリング・ブームを機に、スポーツバイクを購入したものの、十分に楽しむことが出来ないままに乗ることを諦めてしまう「離脱」現象は解消しておらず、事業として成立する有効な取り組みやコンテンツの開発には至っておりません。
その状況を打開し、自転車が本来持つ「多種多様な楽しみ方」を訴求できるコンテンツを造成するための現状把握として、「エントリーユーザー離脱実態調査」を行う運びになりました。
調査概要
調査概要
調査期間:2020年2月19日(水)~2月28日(金)
調査対象:すべてのスポーツバイクオーナー
-すでに離脱した方
-現役エントリーユーザーの方
-元エントリーユーザーの方(現・中上級者)
調査方法:インターネットによる任意回答
回答者プロフィール
有効回答者数:1,483人
男女比:男性1302人(87.8%)/女性181人(12.2%)
年代比:20歳未満30人(2.0%)/20歳~29歳:145人(9.8%)/30歳~39歳(23.0%)
40歳~49歳(34.6%)/50歳~59歳:369人(24.9%)/60歳以上85人(5.7%)
調査結果1:どうやってスポーツバイク始めたの!?
-みんなのスポーツバイクの入門実態-
①購入場所
「初めての自転車はどこで購入しましたか?」
68%が1台目を「スポーツバイク専門店」で購入している
②車種
「初めて購入したスポーツバイクのタイプはどれですか?」
60%が初めてのスポーツバイクとしてロードバイクを購入、うち半分以上がアルミロード
③スポーツバイクの利用目的
「スポーツバイクを購入した際の、利用目的として最も近いものを1つ教えて下さい。」
当初は「手段」としてのスポーツバイクも、経験が長くなると「目的」に。
自転車は「ダイエット」や「アクティビティ」のための「手段」としてスタートする人が多い。一方、年次が進むごとに自転車に乗ること自体が「目的化」する人も多い。特にスポーツバイクを「競技スポーツ」のために乗る人も割合がかなり増えている。
④スキル・遊び方の習得
「スポーツバイクを購入した時に遊び方を手ほどきしてくれる人はいましたか?」
60%の人は「師匠」が存在せず、独学で遊び方を学んでいた
「師匠」がいる人は20%が「誘ってくれた人」、10%は「ショップ」から遊び方やスキルを習得している。
調査結果2:始めてすぐの頃、みんなが悩んでいたこととは!?
-エントリーユーザー登竜門-
①悩みの種類(30%越えの主因)
「スポーツバイクを購入してから2年の間にどのような悩みがありましたか?」
皆が悩んでいたことは「乗りたいけど乗れない!」
天候に左右される(52%)、お金がかかる(48%)、仲間/友達がいない(41%)、メンテナンスが面倒(37%)、同行者に迷惑がかかる(35%)、ルート設定が出来ない(31%)が高い数値を示した。
②悩みの重さ
「前問の選択肢の中で、『最も悩んだこと』を教えて下さい。」
エントリーユーザーが最も深刻に悩んでいたことは「仲間が居ない」こと
悩みの重さで比較すると 「①仲間が居ない(同行者に負担をかけるも含む)→②肉体的につらい→③お金がかかる →④天候に左右される→⑤時間がない」という順番になった。
③解消できない悩み~悩みへの対処~
▼離脱した人「自転車に乗らなくなった悩みを解消しようと試みましたか?」
自転車に乗らなくなった人の約8割は「悩みの解決方法に辿りついていない」
自転車を乗らなくなった、離脱した人のうち、78%は「解決方法」にたどり着くことが出来なかった。 さらに全体のうち43%はそもそも悩みの解消を諦めていた。
③解消できない悩み~悩みへの対処~
▼やめようと思ったけど、やめずに乗り続けている人 「自転車をやめようと思った悩みは解消されていますか?」
自転車をやめようと思ったけど乗り続けている人のうち半分は未だに悩みを抱えている
自転車をやめようと思ったが乗り続けているという人のうち、半分は以前悩みを抱えながらも自転車に乗り続けている。
③解消できない悩み~悩みへの対処~
▼やめようと思ったけど、やめずに乗り続け、その悩みを解決した人 「その悩みをどのように解決しましたか?」
悩みを解決した人のうち、半分は自力で解決出来ている!
一度自転車について悩んでしまい、自転車に乗ることをやめることまで考えたが悩みを解消出来た人のうち、48%は自力での解決への糸口を見つけることが出来ている。 「その他」の中で多い理由としては、「仲間を見つけた」が多数を占めており、選択肢のいずれにも当てはまらなかったので「その他」を選択したと推測できる。
調査結果3:悩みを持つこと早1年
-離脱のはじまり-
①離脱時期
やめてしまった人のうち2年以内に離脱してしまう人が6割。
そのうち1年~2年で離脱する人は1年以内に離脱した人の2倍。
離脱した人のうち、59%は自転車に乗り始めてから2年以内に離脱している。1年~2年以内に全体の37%が離脱しており、最初の1年で離脱した22%より多い。1年を過ぎたあたりが自転車を続けるか離脱するかの分岐点だといえる。「とりあえず1年は続いたけど、一通り遊び尽くし、目的がなくなった」というやめ方が多い人が推測できる。
②どんな理由で離脱している?
サイクリストの一般的な「悩み」と、離脱に繋がる「悩み」は異なる
実際に離脱した人の理由とした人がスポーツバイクに乗りはじめた最初の2年間で抱えていた悩みとしては、「天候に左右される(66.2%)」「お金がかかる(59.2%)」「肉体的につらい(56.4%)」が多い理由になっている。 一方で、「今も乗り続けている人」と「離脱した人」で同じ設問を比較してみると、「離脱した人」は「今も乗り続けている人」と比べて、「走る目的がなくなった(31.5%の差)」「目的にあったルートを設定できない(16.7%の差)」「スタート地点までの移動手段がない(16.2%の差)」という悩みを抱えていた割合が大きいことがわかった。 離脱してしまった人は乗り続けている人に比べて、「走る目的を見失った」「走る目的に適した環境が分からない、準備できない」といった悩みを抱えていると言えるだろう。
調査結果4:エントリーユーザーに優しい世界を目指して
どんなサービスがあれば離脱を防げる?
①「自転車に乗る目的がない・分からない」いうペインを埋めるために
この調査から、離脱してしまう人の特徴として『自転車に乗る目的を見失った・分からない』という悩みを持つ人が多いことが分かった。
自転車をやめた理由の自由回答では、「景色の良いところやグルメスポットに行きたいが、そこまで行くのが大変・行き方が分からない」「仲間が居なくてモチベーションが続かない」「乗るまでの過程が億劫」といったものが多くあった。
また、同じく自由回答である「どうすれば乗らなくなったと思いますか?」という設問に対しては、
「同じ力量・レベルで走れる仲間」「同じ目的を持ったり、情報交換の出来る仲間」「安全に乗れる環境やルート作りの手段」「もう少し気軽に乗れる環境」というような回答が多く見受けられた。
このことから、スポーツバイクオーナーの離脱を防ぐためには、『自転車に乗る目的を見失った・分からない』という悩みを解決するために、『分かりやすい目的』『同じレベル・目的を持った仲間』『安全かつ気軽に乗れる環境』を構築していくことが大切だと推測できる。
②購入してから1-2年以内に
自転車に乗らなくなった人のうち、自転車に乗り始めてから2年以内に6割が離脱している。さらに2年以内に離脱した人のうち6割(離脱した人の37%)は1年~2年の間に離脱している。
このことから、自転車に乗り続けるか・離脱してしまうかの分岐点は『自転車を購入・乗り始めてから1年~2年の間』であるということがいえる。
③どんな「体験・ゲイン」があるサービスが喜ばれるのか
このことから
・自転車に乗る目的を見いだせるサービス(新しい景色、風景、グルメなどを体験できる)
・同じ力量、レベル、目的を持った仲間と走れるサービス
・安全かつ気軽に乗ることが出来るサービス
この3つを満たすことが出来るサービスを自転車購入から2年以内の人(特に自転車歴1年~2年以内の人)に届けることが離脱を防ぐために重要であるといえる。
ツール・ド・ニッポンでは、本調査から見えてきた「エントリーユーザーが離脱してしまう原因」をクリアするべく、新しいコンテンツを開発させていただきました。
今回はそのコンテンツをより良いものにしていくために、モニターを限定8名さま募集させていただきます!
詳細は以下ページをご覧ください。
さいごに
今回の調査は、「玄人の愛好者」ではないエントリーユーザーが、サイクリングの魅力を十分に楽しむことが出来ずに悩んだまま「離脱」してしまっているのではないかという仮説をもとに実施しました。
サイクリングを通じた観光促進「サイクル・ツーリズム」での地域活性化を目指すにあたって、エントリーユーザーの方々がサイクリングを悩みなく楽しむことは必要不可欠であると考えております。
この調査で、サイクリストの皆様が抱えている悩み、なぜ離脱してしまったのかという理由や離脱時期などを可視化することが出来ましたので、この結果を踏まえ、ツール・ド・ニッポンではより多くのサイクリストが楽しむことが出来る多種多様なコンテンツを皆様に提供できるよう尽力してまいります。